スキニング
「スキニング」は、必ず一番最後に行ってください。
スケルトン(ジョイント)を追加したり、変更したあとでもスキニングは可能ですが返って手間がかかります。
スケルトン(骨格)とキャラクタオブジェクトのポリゴン頂点を関連付ける一連の編集操作を「スキニング」といいます。
ポリゴンオブジェクトとスケルトン(ジョイント)を選択し、「スキンのバインド」を適用するだけで関連付けは完了します。
しかし一般的には、関節のジョイントを回転させ曲げて確認しながら「スキンウェイト 」(頂点がどの程度ジョイントの動きに追従するかの重み付け)を微調整する必要があります。 これは、「スキンウェイト のペイントツール」で行います。
リギング >> スキニング >> モーションのリターゲット の概要についてはPDFファイル「リギングからモーションのリターゲット 概要」を参照してください。

1 . スキンのバインド
スキンのバインドは、クイックリグでも可能ですが、指のジョイントを追加した場合などHIK定義を再度設定したときは「スキンのバインド」ツールを使用します。
➡︎ スキニングの前に、ポリゴンオブジェクトを選択し、「トランスフォームのフリーズ」と「ヒストリの削除」を忘れないでください。
まずは、アウトライナですべてのジョイントを選択し、続けてポリゴンオブジェクトも選択してください。 (ジョイントのrootオブジェクトだけでも可能ですが、すべて選択した方が確実です。)

続けて、シェルフのタブを「リギング」に切り替え、「スキンのバインド」アイコンをダブルクリックしてオプションを表示してください。

バインドスキン オプションで、必ず下図のとおり設定して「スキンのバインド」を適用します。


スキンバインドの確認
スキンのバインドを確認しますが、リグの動かし方に注意が必要です。
クイックリグ でコントロールリグがすでに設定されている場合は、クイックリグ パネルでコントロールを選択して動かしてください。
元の位置に戻す時も、クイックリグ パネルの「スタンスポーズ」ボタンをクリックしてください。
クイックリグ ではなく、ジョイントツールでカスタマイズして作成したジョイントについては、次のように操作してください。
ジョイントを一つ選択(UpLeg:大腿部などが良い)してZ軸で回転させてください。
回転ツールを選択しなくても、チャネルボックスで「回転Z」の項目名を選択し、ビュー画面上でマウス中ボタンを押しながら左右にドラッグして回転できます。
キャラクタオブジェクトの脚が前後に動けばOKです。
元に戻すには「回転Z」に0を入力し、returnキーを押してください。 注意:クイックリグ で作成したコントロール リグはこの方法で元に戻さないでください。必ず「スタンスポーズ」ボタンをクリックしてください。


2 . スキンウェイト のペイント ツール
スキンのバインドだけでもキャラクタをアニメーションできますが、そのままではキャラクタオブジェクトの変形具合に少なからず問題が起きることがあります。
各ジョイントを回転させながらキャラクタオブジェクトの変形具合を調整するには、「スキンウェイト のペイントツール」を使います。
キャラクタオブジェクトを選択し、「スキンウェイト のペイント ツール」アイコンをダブルクリックしてオプションウィンドウを表示してください。

下図のように「スキンウェイト ペイント ツール」オプションウィンドウが表示され、ポリゴンオブジェクトの表示が変化します。
図ではカラー表示にしていますが、デフォルトでは黒から白へのグラデーションで表示されます。ペイント ツールオプションウィンドウ下の方の「グラディエント」項目を展開し、「カラー ランプの使用」にチェックを入れるとカラー表示にできます。


インフルエンスとは
スキニングで頻繁に使われる言葉として「インフルエンス」があります。 英語の意味としては「影響」「影響力」です。 ここではポリゴン頂点に影響をおよぼすジョイントが「インフルエンス」です。
スキンをバインドするときの設定で「最大インフルエンス数:」を「2」に設定すると、一つのポリゴン頂点が、最も近くのジョイントとその次に近いジョイントの回転の影響を受けます。
例えばUpLeg(大腿部のジョイント)を前方へ回転すると太腿の付け根のポリゴン頂点も同じように回転・変形しますが、近くにあるもう一つのインフルエンスHipジョイントの影響も受けるため、Hipジョイントに近い頂点ほどUpLegジョイントの影響は小さくなっていきます。
この影響の度合い(重み付け= スキン ウェイト)は 0.0〜1.0 の数値と 黒から白へのグラデーションで表示・確認、そして変更することができます。
スキンウェイト ペイント ツールでの作業目的は、スキンウェイト をペイントすることで重み付けを修正し望み通りの変形状態に調整することです。

インフルエンスの選択
スキンウェイト をペイントするにはまず最初にインフルエンス(ジョイント)を選択します。
選択する方法は主に2通りあり、一つはスキンウェイト ペイントツールオプションウィンドウ上部リストで選択する方法です。

もう一つは、ビューでインフルエンス(ジョイント)を右クリックし、「インフルエンスの選択」を選ぶ方法です。

インフルエンスを回転させる
インフルエンスを選択すると影響するスキンウェイト をペイントして調整できますが、ペイントの前に調整の必要があるか、ウェイトをどの程度の値にするかをインフルエンスを回転させて確認する必要があります。
回転ツールに切り替えるとペイントツールが解除されてしまうので、ペイントツールの状態のまま回転させるには下の動画のようにマウス中ボタンでインフルエンスをクリックします。
回転ハンドルが表示されるので、中ボタンを押しながらマウスドラッグして回転させてください。
回転を元に戻すには、右クリックして「バインドポーズに移動」を選びます。
ペイントに戻るには、インフルエンスを左マウスボタンでクリックします。

オプションウィンドウの基本の設定
スキンウェイト のペイント操作は、オプションウィドウの設定で使い勝手が異なりますが、基本的には次のように設定しておくことを薦めます。
「ペイント操作:」は、「置き換え」を選びます。 0.0〜1.0までのウェイト値を予め設定しておき、その値でウェイトを割り当て(ペイント)します。
「プロファイル:」は、「ソリッド ブラシ」を選択し、ぼかしを使わずにペイントします。 「不透明度:」も1.0000に設定して曖昧な結果を避けるようにしましょう。
「ウェイト値:」を0.0〜1.0の間で調整することだけに集中して作業してください。


頂点のウェイト値を取得する
スキンウェイト 値をペイントする前に、ペイントする頂点の現在のウェイト値を知っておくと作業が確実になります。
頂点のスキンウェイト値を知る方法は2とおりあります。 一つは、スキンウェイト ペイント ツール オプションウィンドウで、「値:」のスライダー右側にあるスポイトアイコンをクリックする方法。
もう一つは、ビューでジョイントまたはボーンの上で右クリックし、「選択値」を選ぶ方法です。
どちらの方法も、マウスカーソルがスポイトの形状に変化するので、ウェイト値を知りたい頂点の上でクリックします。 すぐにスキンウェイト ペイント ツール オプションウィンドウの「値:」の欄にクリックした頂点のウェイト値が表示されます。
次の一つ目の動画は「値:」のスポイトアイコンをクリックして取得する方法で、2つ目の動画はインフルエンスを右クリックして「選択値」を選ぶ方法の例です。
動画1:「値:」のスポイトアイコンをクリック
動画2:インフルエンスを右クリック

頂点をペイントしてウェイト値を変更する
上の動画ではひざのジョイントを曲げた時にTシャツの裾と太ももまで大きく変形しました。
Tシャツの裾部分の頂点のウェイト値を取得してみると「0.2613」という値でしたので、この頂点を「0」でペイントしてウェイト値を「0」に変更します。
動画:ウェイト「0」でペイントする
これで、ひざを曲げてもTシャツの裾が伸びることがなくなりました。

ウェイト値の合計は常に「1.0」
上の動画の操作で、Tシャツの頂点ウェイトについては、ひざをインフルエンスとする値は「0」になりました。 しかし、もう一つのインフルエンス(太もものジョイント)のウェイト値は逆に増えて「1.0」になります。
各頂点のスキンウェイト値は、2つのジョイントの影響を受ける設定にしているので、どちらかの値を減らすともう片方の値は逆に増えることになり、合計は常に「1.0」になります。


ウェイト値のコピー&ペースト
頂点をペイントしてウェイト値を変えようとしてもうまく反応しないことがあります。 頂点の上をなぞるようにドラッグするとペイントできることもありますが、それでもダメな場合はコピーとペーストを使用して直接ウェイト値を変更できます。
下の動画は太もも正面の頂点ウェイト値を減らすため、すぐ右側の頂点ウェイト(正面のウェイトより少ない値)をコピーし、正面の頂点にペーストしている例です。
動画では修正の前後で変化がわかりにくいと思いますので、下図で確認してください。


頂点選択モードとペイントモード
尚、頂点を選択するためには、右クリックして「選択モード」を選んでください。 この時ジョイントやスケルトンの上ではなく、ポリゴンオブジェクトの上で右クリックする必要があります。
頂点の選択は、普段の選択に比べて反応が鈍いので、何度かクリックまたは小さく囲むようにドラッグしてみてください。
選択の解除はブランクスペースをクリックするだけです。
元のペイントモードに戻るには、右クリックして「オブジェクト モード」を選択し、その後もう一度右クリックして「ペイント モード」を選んでください。
また、モードの切り替えはツールオプションウィンドウでも同じようにできます。下図を参照してください。


ブラシサイズの調整
ブラシの大きさはMayaの他のブラシと同様にBキーを押しながらドラッグして変更できます。
頂点が接近している場合などは小さく、一度に複数の頂点をペイントする場合などは大き目に調整してください。

3. スキンウェイト のミラー
スキン ウェイトのペイント調整はキャラクタオブジェクトのLeft(向かって右半身)側だけ行い、すべてのインフルエンスのウェイト値が完了してからRight(向かって左半身)側へまとめてミラーコピーします。
スキン ウェイトのミラーは、オブジェクトを選択し、スキン ウェイトのミラーオプションを開き下図のように設定してから実行してください。

スキンウェイト のミラー オプション


スキニングは細かいところにこだわるとかなりボリュームのある作業になります。
また、眼球などを別オブジェクトとした場合はコンストレイント の設定が必要になります。
キャラクタオブジェクトのテイストに応じて制作してみましょう。
