このページでは、透明なオブジェクトのマテリアルと「レンダー設定」について説明します。
前々ページと前ページで制作した「グラスに入ったドリンクとアイスキューブ」にマテリアルを設定します。


レンダリング解像度の設定
今回は、透明で反射のあるマテリアルが多いため、PC負荷が大きくレンダリング時間が長くかかります。 解像度が高い場合、PCがクラッシュすることもあります。
「レンダー設定」を開き、「イメージサイズ」(解像度)を確認してください。
デフォルト プリセットの[ HD_540 ] (960 x 540 )に設定してあればOKですが、そうでない場合はデフォルト値にしてください。
マテリアルが確定してから解像度を本番用に上げるようにしてください。
尚、「レンダー設定」についての説明は下記リンクを参照してください。

アイスキューブ のマテリアル
氷(アイスキューブ)のマテリアルは、前ページで複製する前に設定していますが、一部変更してください。
下図のマテリアル設定のとおり画像の一番下の項目[ ▼Arnold-Trancemissin > Dielectric Priority ] の値に「 2 」を入力してください。

グラスのマテリアル
次にグラスのマテリアルを設定します。
グラスオブジェクトだけを表示
グラスオブジェクトだけを表示し、ドリンクとアイスキューブは隠してください。

アイスキューブに設定したBulletの影響で、ビューでグラスオブジェクト上を「右クリック」するとアイスキューブが選択されてしまいます。
必ずすべてのアイスキューブは隠しておいてください。
グラスの「標準サーフェス」
グラスオブジェクト上で右クリックし、「新しいマテリアルの割り当て」 > 「新規マテリアル…」を選択してください。
「新しいマテリアルの割り当て…」ウィンドウで ▼Maya–サーフェス の 「標準サーフェス」を選択してマテリアルアトリビュートを開きます。
アトリビュートエディタで、図のように設定してください。 画像の一番下の項目[ ▼Arnold-Transmissin > Dielectric Priority ] の値に「 3 」を入力するようにしてください。
尚、「透過」の「ウェイト」を「1.000」に設定するとオブジェクトは透明に表示されます。

ビュー表示を「スムーズ シェード」にしていると、透明なマテリアルを設定したオブジェクトは、ビューでは全く見えなくなります。
ビューメニューの「既定のマテリアルの使用」ボタンをONにして表示してください。
ライトとテーブルの準備
アイスキューブとグラスのマテリアルの設定は済みました。残る「ドリンク」オブジェクトですが、マテリアルの設定項目が他の2つに比べて多いので、その前にレンダリングの準備を済ませておきます。
ライトやテーブルオブジェクトが必要ですが、毎回、作成、設定するのは効率が悪いので、ライトを設定してある他のシーンから読み込んでください。
読み込み方は、下記リンクを参照してください。

ドリンクのマテリアル
最後に残るドリンクオブジェクトのマテリアルを設定します。
Bulletの影響で思ったようにオブジェクトが選択できないので、ドリンクオブジェクトだけを表示してください。
尚、他のオブジェクトを隠さずに、「ハイパーシェード」でマテリアルだけを作成しておく方法もあります。

ドリンクの標準サーフェス
今回のシーンでは、ドリンクのマテリアル設定が最も重要になります。
ここでは、「アイスティー」としてマテリアル設定していきます。
オブジェクト上で右クリックし、「新しいマテリアルの割り当て」 > 「新規マテリアル…」を選択してください。
「新しいマテリアルの割り当て…」ウィンドウで ▼Maya–サーフェス の 「標準サーフェス」を選択してマテリアルアトリビュートを開きます。
マテリアル アトリビュートでとりあえず下図のとおり設定してください。
図で指示している項目だけこのとおりに設定して下さい。
特に「▼透過」項目の「深度」と、画像の一番下の項目[ ▼Arnold-Transmissin > Dielectric Priority ] の値に「 1 」は重要です。

「透過」項目の「カラー」は、とりあえずは図のとおりの色に設定してください。
色は下の図のようにカラーチューザーで設定して下さい。

ひととおりオブジェクトへの新しいマテリアル設定が終わりました。
今後、「マテリアル アトリビュート」を表示するときは、アウトライナでオブジェクトを選択してください。
ライトセットを準備し、隠していたグラスとアイスキューブ、ライトのセットなどすべて表示してください。
Bulletで使用した衝突オブジェクト[ Glass_IN ]は必ず隠しておいてください。ただし、削除してはいけません。
レンダリング
特に透明なオブジェクトのマテリアルは、レンダリング結果を見ながら調整します。
ビューではレンダリング結果は分からないので、ビュー表示は「既定のマテリアルの使用」を選び、グレーのスムーズシェードで表示しておきます。
下の画像のような視点にするとグラスの側面と上面の両方が見やすくなります。
また、アウトライナでドリンク オブジェクトを選択し、マテリアルアトリビュートで少し下へスクロールし、「 ▼ 透過 」の項目を表示しておいてください。
レンダリング結果を見ながら調整するのは「 ▼ 透過 」の項目です。

上の図では「解像度ゲート」を表示しています。 「解像度ゲート」については下記のリンクを参照してください。

透明マテリアルはPCに負荷がかかるため、クラッシュに備えて上書き保存してください。
また、そのあとで「別名で保存」でバージョンを変えて保存しておくと、万一の場合に戻りやすくなります。
「現在のフレームをIPRレンダー」ボタンをクリックし、Arnold RenderViewを表示してレンダリングしてください。

設定項目とレンダリング結果
ここまでのドリンクオブジェクトのマテリアル設定とレンダリング結果は、下図のようになります。
実際は「▼透過」 > 「カラー」と「深度」を微調整して決めていきますが、マテリアルに関しては、この設定で完了とします。
ただし、このあと「レンダー設定」で「Ray Depth」を調整し、クオリティを上げていきます。

上記設定項目の最後にある [▼ Arnold-Transmission] > [ Dielectric Priority ] は、3つのオブジェクトの重なっている部分の優先順位です。
それぞれ 1 ~ 3 の番号を割り当てましたが、数字が大きいほど優先順位が高くなります。
- グラス 3
- アイス キューブ 2
- ドリンク 1
ドリンクとアイスキューブが重なっている部分は、アイスキューブの表面が優先。
ドリンクとグラスが重なっている部分は、グラス表面が優先となって光の屈折・透過が計算されます。
[ Dielectric Priority ] の詳しい説明は、Autodesk Arnold の下記Webページを参照してください。
「レンダー設定」- [ Ray Depth ]
この「レンダー設定」の[ Ray Depth ] 項目を変更した場合、レンダリング時間が極端に長くなっていきます。
数値を上げる場合は、それぞれのマテリアル設定をほぼ決定してからの方がよいでしょう。
また、シーンファイルを上書き保存し、その上で別名保存しておきましょう。
レンダー設定 ‐ Arnold Renderer タブ
図の歯車の付いたカチンコ アイコンをクリックして「レンダー設定」を開きます。

さらに、上部の[ Arnold Renderer ]タブを選択してください。
この[ Arnold Renderer ]の項目も、「レンダー設定」の「解像度設定」などと同じく、個々のマテリアルではなくすべてのレンダリング結果に影響します。

この上部に展開している項目 [ ▼ Sampling ] は、Arnoldレンダリングのクオリティを決定する重要な項目がありますので、無暗に変更しないようにしてください。
レンダリング時間にも大きく影響するので注意が必要です。
「Ray Depth」
今回、設定するのは、図のようにパネルの下方にある [ Ray Depth ]の項目ですので、展開して調整していきます。

Total
[ Total ] には、その下の3項目、[ Diffuse ] [ Specular ] [ Transmission ]を合計した値を入力します。
面倒ですが、この3項目を変更したときは [ Total ] に合計した値を入力してください。 自動的に計算してくれません。

上記デフォルト値のレンダリング結果

Transmission
最初に4項目目の [ Transmission ]を デフォルト値「8」から「12」に上げてください。
同時に Total を「14」に変更してください。

変更結果 (Transmission 12)

Transmission は、光が屈折する最大回数のことです。グラスの手前の外面・内面、奥の内面・外面という具合にグラスだけでも4か所で光は屈折します。
デフォルト値は「2」ですが、グラスの底面、アイスキューブ、ドリンクの水面などを合わせると部分によってはかなり多くの屈折数が必要になります。
黒く見えていた部分は、この値を上げることである程度まで改善されます。
この値が「0」の場合、ほとんどが黒になります。
Specular
次に、3項目目[ Specular ]を「1」から「4」に変更してください。
同時に Total を「17」に変更します。

変更結果 (Specular 4)

Specular には、光が反射する最大回数を指定します。
このグラスの場合、特にドリンク内に沈んでいるアイスキューブの見え方に影響します。
Transparency Depth
最後は、一番下の項目 [ Transparency Depth ] を「2」から「6」に変更してください。
この項目では、Totalを変更する必要はありません。

変更結果 (Transparency Depth 6)

Transparency Depth では、光が透明な面をいくつ透過するかを指定します。
このグラスドリンクの場合、グラス手前の表面・内面・ドリンクの面で3つ、奥側のドリンクの面・グラスの内面・外面で3つ、合計6つの「表面」(サーフェス)を透過する必要があります。 「6 」に設定することで、テーブルに落ちる影にもドリンクの「透過 ー カラー」の色が反映されるようになります。
[ Ray Depth ]についての詳しい内容は、Autodesk Arnold の下記リンクを参考にしてください。
これで、透明なオブジェクトのマテリアル設定と「レンダー設定」についてはひととおり完了です。
下記は、マテリアルの「▼透過」 > 「カラー」と「深度」についての説明になります。
レンダリング結果を見ながらさらに調整するときの参考にしてください。
「▼透過」 > 「カラー」と「深度」について
「 ▼ 透過 」項目の「ウェイト」は、基本的に「1.000」です。
そして、透明なグラスと液体の場合、重要なのは、「 ▼ 透過 」項目の「カラー」と「深度」になります。

「▼透過」 > 「カラー」
透明なマテリアルの色の見え方は、「 ▼ 透過 」項目の「カラー」で決まります。レンダリング結果を見ながら「カラー」で色味、特に「色相」= [ H: ]を微調整すると、下記のようなバリエーションがつくれます。
➡ 「▼透過」 > 「カラー」以外は、ここまでのマテリアル設定と変えていません。
次のようなカラー変更を試すときは、「レンダー設定」の [Ray Depth ] を元に戻すべきでしょう。
レンダリング時間が膨大になってしまいます。
H(色相)をグリーン寄りに変更

H(色相)をピンクに、S(彩度)を下げる

H(色相)を青緑に、S(彩度)を下げ、V(明度)を上げる

前に設定した色を簡単に選ぶには、「カラーチューザー」のスウォッチから選択します。スウォッチには今まで選んだ色が記録されています。(左が新しい色です。)
ただし、シーンファイルを閉じると初期化されてしまいます。
「カラーチューザー」を表示するときにダブルクリックすると、もっと詳しい設定ができる「カラーエディタ」が開きます。
カラーエディタでは、選択した色を保存しておくこともできます。
詳しくは、Mayaのヘルプを参照してください。▷▷カラー チューザ(Color Chooser)コントロール
「▼透過」 > 「深度」
「深度」の値は、レンダリング結果に大きく影響します。
グラスに入った透明オブジェクトの場合は、この「深度」が「0」の場合、色が付きません。

「深度」とは、オブジェクトの表面からどのくらいの距離で「カラー」で設定した色のとおり見えるかを決める値です。
例えば、現在「1.5 」に設定しているので、ドリンクオブジェクト表面よりも1.5cm奥へ進んだ部分に関しては、「カラー」で設定した色で見えてきます。
それよりさらに奥に物体がある場合は奥行があるほど色は濃くなります。
透過 に関する値は、オブジェクトのスケール(大きさ)に影響されます。巨大な水槽やプールの場合は、「深度」の値を大きくする必要があります。
「▼透過 > 「深度」と色の見え方
次のように「深度」設定値によっても、透明オブジェクトの見え方が大きく変わってきます。
「深度:」が「0.000」の場合に限り特別で、全く色が付きません。無色透明になります。
しかし、「0.001」などほんの僅かでも数値が入ると最も色が濃く、黒に近くなります。
それ以上は、数値が大きくなるほど「カラー」に近づきます。
ただし、大きくなりすぎると逆に色は薄まり無色透明に近づいていきます。
透過 > 深度: 0.000

透過 > 深度: 0.001

透過 > 深度: 0.100

透過 > 深度: 1.000

透過 > 深度: 1.500 ➡ 今回のDrink_Teaの設定

透過 > 深度: 3.000

透過 > 深度: 10.000

「透過」の設定項目についての詳しい説明は、下記リンクのArnoldガイドを参照してください。



